他人の恋愛や家庭に介入しないという強さ

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不倫が話題だ。

 

個人的には、他人の不倫に関心を持つのは自由だけど、やれ妻や子がかわいそうとか、不倫相手調子に乗ってるとか、ブスとか、下品とか、そういうことを不倫にかこつけて言っていいとされる風潮はとてもきらいである。

不倫することそのものより、他人の個人的な恋愛や家庭や容姿についてごちゃごちゃ言う方が下品だと思う。

 

かといってべつに不倫を肯定したいわけではないし、男はそういう生き物だから仕方ない!!とかいう謎の許容論も言いたくない。

 

彼らの主演映画はとても良作だったし、演技も好きだったけれど、

「ふたりが不倫していたからこそ良い映画だった」「不倫は芸の肥やし」などという肯定(?)意見も散見されたが、それはそれで言い過ぎだと思う。

もしかしたら正しいのしれないけど、とくに確証もないのにそんなことを言うのは過介入で、冒頭に書いた不倫否定派の下品さと似たようなものだろう。

 

べつに不倫したって、しなくたって、どうだっていいことなのだ。他人なのだから。

不倫による当事者の苦しみや罪は彼ら彼女らの問題であって、私たちの問題ではない。

 

他人と自分の境界があいまいで、簡単に介入しすぎる人間が多くいると、不自由で生きづらいなあと思う。

 

 

そんなことを考えつつ、ふと思い立って、自分の過去に書いたものを読み返したら、けっこう良かった。

 

DRESSの2019年10月特集「冷静と情熱の女たち」に寄稿した伊藤野枝の記事である。

 

私も、あなたも、わがままでいい。伊藤野枝が求めた自由 | DRESS [ドレス]

 

 

読んでもらえると分かるが、伊藤野枝とは、家出して、また不倫して、セックスしまくって、7人の子どもを産み、文章を書きまくって、28歳の若さで憲兵隊に殺された女性である。

 

公開時、記事を読んでくれた人からは、「こんなに強い女性が100年前にいたのか」といった驚きの声を多くいただいた。

たしかに彼女は強いかもしれない。とくに子どものウンコを職場の庭に捨てるところとか、どういうメンタルしてるんだろう?と思う。

 

でも、これを書くにあたって彼女が書いたものをいろいろ読んだ私は、みんなが言うほど伊藤野枝に強いという印象を持っていない。むしろ人一倍悩んで、考えて、人を頼って、矛盾しまくって、生きていたと思う。

 

じゃあなんで口々に強いと言われるのかというと、「他人に何を言われても気にしないし、他人の自由も保障する」というスタンスを一貫してとっているからだと思う。

 

他人と自分の境界を見据えること。それは強さであり、最大限の尊重であり、つまり愛だ。

 

 

ちなみに伊藤野枝の記事を書くのに何冊か本を参考にさせてもらったが、なかでも圧倒的に面白かったのが、栗原康著『村に火をつけ、白痴になれ』だった。栗原さんの軽い筆致で、彼女の主張や人生を丸ごと肯定しつつ、わかりやすくおもしろく書かれたものである。

 

それがこのほどついに!文庫化された。文庫版あとがきも栗原さん節が炸裂で最高だ。

 

わたしはただセックスがしたいんだ。なにかのためじゃない、だれかのためじゃない、ただやりたいんだ。やらせろ、セロセロ。

 

ウケる。

 

これは、「伊藤野枝は結婚制度を否定しているが、それでは少子化が進むのではないですか?」という問いにたいしての栗原さんのアンサーである。

税金のために、だれかのために、セックスするのではない。ジェンダーとかも知るもんか。やりたいときにやるんだ。するもしないも強制されるものではない。

これは伊藤野枝の思想でもあった。

 

個人的な恋愛や家庭のことを、他人に介入しないし、させない。

100年後を生きる私も同意するし、できれば理解してくれる人が増えてくれたらいいなあと思う。

 

 

そういえば、最近は選択的夫婦別姓制度も話題だ。審議のときに「それなら結婚しなくていい」という野次が飛んだとか。

 

夫婦別姓にすると少子化が進む(ので良くない)という意見も根強いが、私はあまりそうは思わない。結婚制度全否定の伊藤野枝は7人の子どもを産んでるし、私自身も非嫡出子だし。結婚はしなくても、セックスはしたい、あるいは子どもは欲しい、そういう欲求は変わらないんじゃないかなあ。

でも、たしかにこれまで家庭や社会に「もっと産め」とそそのかされて、嫌々ながら産んできたような人は、これからは減るだろう。それはそれでよくね。

 

選択的夫婦別姓は、選択できるというところに肝がある。夫婦の姓を同じにするか別にするか選べます、というだけの制度だ。だから、「それでは夫婦の絆が弱まる!」などと別姓に反対の人はただ同姓を選べばいいだけだよね。

 

不倫スキャンダルにも、選択的夫婦別姓にも、どちらにも思うことだが、他人の恋愛や家庭に介入しないと気が済まない人が多すぎるのだ。

 

自分の持っている恋愛観、家族観で統一されないと、子どもが可哀想。日本が滅びる。

 

うるせえな。

 

前出の本のあとがきはこう結ばれている。

 

なにかのためじゃない、だれかのためじゃない。やりたいとか、やりたくないとか、そんな理由すらなくたっていい。なぜという問いなしに生きる。やっちまいな。その力はどんな為政者よりもはるかにつよい。おらつよくなりてえ。いつも心に伊藤野枝を。

 

私は強さとはこのことだと思う。それは最大限の尊重であり、つまり愛だ。

 

いつも心に伊藤野枝を。

 

 

村に火をつけ,白痴になれ 伊藤野枝伝 (岩波現代文庫)

村に火をつけ,白痴になれ 伊藤野枝伝 (岩波現代文庫)